こんにちは、YOKOITOの高松です。
YOKOITOは学生ベンチャーで、3Dプリンターなどを使って様々な人のアイデアから製品を作ることを目指して活動しているのですが、今回は3Dプリンターでカメラレンズを作ったのでそれをご紹介します。
これがそのカメラレンズです。デジタル一眼レフにつけた状態です。
写真を見てもうお気付きの方も居るかもしれませんが、このレンズの外装は全てFDM式の3Dプリンターで作られています。FDM式3Dプリンターというのは樹脂を溶かすタイプで、比較的安価な個人向けのものも沢山販売されています。
このレンズは「FAB-LENS」という名前で、プロダクトデザイナーの鈴木雄貴さん、グラフィックデザイナーの深地宏昌さんとYOKOITO3者での共同開発品です。もともとは昨年夏に行われた岐阜・大垣のミニメイカーフェア(メイカー達が、自分たちで作ったものを展示するお祭り)で出会った鈴木さんから修士製作を製品化できないかとお話を頂き、この5月にようやく完成をみました。
上の写真のレンズはこのようなパーツで構成されています。
左2つはマウント部で、カメラ本体とレンズを組み合わせる部品です。当然のことながらズレなくしっかりとはめるには試行錯誤が必要でした。データを作る際はすぐそばに3Dプリンターを置いて、モデルを出力しては寸法を確認し、また修正データを作って出力し……という風に進めました。まさにラピッドプロトタイピングです。
その右隣のパーツはネジです。このレンズは全てのパーツをねじ込んで組み合わせる仕組みになっているのですが、その中でも最もねじねじしている部品ですね。こちらはRhinocerosというCADソフトでヘリカルカーブを使って1.5mmピッチでネジを切りました。
こんな感じ。この画像ではネジになっていますが、カーブの端点の曲線をカーブに沿って押し出して出来た物体で円筒を差演算した結果です。
真ん中の輪っかはネジとレンズモジュールとをつなぐジョイントです。そしてその間に入るのが先ほどの画像の中で唯一3Dプリント品でない紙製の絞りです。こちらは黒の厚紙をレーザーカットしてつくりました。
ネジを外すと、こういう風に色々な大きさ・形の絞りを入れ替えられるので、写りも変わって面白いです。この場合ボケがハート型になります。
その横はレンズモジュール。レンズを挟みこむように3Dプリントしたパーツ2つを合わせています。中のレンズは今は既成品を使っています。現在CNC切削マシンや3Dプリンターでレンズの原型を製作中なので、そこまで作れるといいなあ、と思っています。折角だから徹底してFABしたいですよね。
一番右はフードです。これらを全部組み合わせると最初の写真のレンズになるんです。
ここまで長々と書いてきましたが、実際にこのFAB-LENSを使って撮った写真をもう何枚かお見せしようと思います。
こんな写真が撮れます。レンズ1枚の構成なので光学性能はお世辞にも高いとは言えませんね。どっちかというとレンズの歪みや、ボケを楽しむ、トイカメラとして見てもらえればなと思います。
この写真なんかは絞りを極端に後ろの方につけて撮った秋葉原駅前です。……というか実は写真全部秋葉原です。
こちらは一切編集なしの撮って出しです。結構面白いでしょう?
見た目も市販のレンズとは明らかに違うので「ん? 何だあのレンズ」といった感じでインパクトバッチリです。
3Dプリントで色々な色・形を簡単に作れるのもいいところですね。
かわいい色にしたり。
変な形のフードにしたり。
そこはかとなくスチームパンクが感じられるようにしたり。
そして、実はこのレンズ、販売します。
今のところEFマウント互換モデルとマイクロフォーサーズマウント互換モデルだけですが、ネット上と、YOKOITOが運営する京都のものづくり広場fagora、に置いてます。あと16日、17日に東京ビッグサイトで行われるデザインフェスタにも出展してます。是非見に来てください!
FAB-LENSサイト
また、オープンソースのプロジェクトなのでThingiverseに一連のデータをアップロードしています。
3Dプリンターをお持ちの方は是非こちらからダウンロードしてプリントしたり改造したりしてみてください。
まとめると
3Dプリンターで作られたレンズとして
・FDM式3Dプリンターで製造されたカメラレンズ製品が今までなかった点で新しい
・ユーザー自身がパーツをプリントすることで色を変えたり、形を変えたりできる点で新しい
・使用で破損してもデータをダウンロードしてプリントすれば交換パーツを作ることができる
トイカメラレンズとして
・今までフィルムカメラが多かったトイカメラの中でデジタルカメラでも使えるレンズという点が新しい
・パーツを組み替えて違う写りや見た目を作ることができる点が新しい
今回このレンズを作ってみて、低価格帯の3Dプリンターで作った製品も十分行けるんじゃないか、と感じています。
ものづくりの世界ではFDM式3Dプリンターで製品を作る、ということ自体が否定されがちな気がしますが、比較的少量のものや、今回のようにユーザー側が製作・改変したりして製品に参加できる形であればむしろとても可能性があるジャンルなのではないかな、と思います。トイカメラと3Dプリンターとの相性は抜群の気がしますし。
長い記事をここまで読んで頂きありがとうございます。皆さんのFAB-LENSへの参加お待ちしてます!
ご意見・ご質問等はこちらのコメントかTwitterアカウント@YOKOITO_infoにお願いします。
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