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【初級者脱出】3Dプリンターの「速さ」と「精度」を左右する、2つの要素を学ぼう

こんにちは。YOKOITOの髙松です。


今回は「3Dプリンターの『速さ』と『精度』を左右する、2つの要素を学ぼう」ということで、簡単にですがFDM式3Dプリンターの出力物とプリント速度について検証し、理想的な3Dプリントについて考えてみたいと思います。


この記事は3Dプリンター初級者の方が中級者くらいになるために必要な知識を得る、というのをテーマに書きました。


まず3Dプリンターの速さと精度を考える上で始めに知っておいてもらいたいのは、基本的に3Dプリンターにおいては「速さと精度はトレードオフの関係にある」ということです。

速くすれば粗くなる、精度を上げれば遅くなる、これがベースにあると思ってください。


さて、普段趣味や仕事でFDM式3Dプリンターを使用されている皆さんは、「早く出力物を完成させたい」或いは「もっと綺麗に造形したい」と思うことはありませんか?


ありますよね。早く出力結果を確認したいのに造形が終わるのを長々と待っている、もっと綺麗に出力したいのに上手くいかない、そういった状況を経験された方は多いと思います。

そんな、3Dプリンターの速度や精度といった事柄について語られる時にまず出てくるのが、積層ピッチという言葉です。


「知ってるよ」という方も多いかもしれませんが確認の意味も込めて簡単に説明すると、「3Dプリントの際に一層をどのくらいの厚みで出して重ねていくか」を表す数字です。一般的な個人向け3Dプリンターでは0.3mm〜0.1mmくらいで調節可能なものが多いですね。例えば高さ10mmのものをプリントする際、積層ピッチ0.2mmでは単純計算で50回積層することになります。一方これを積層ピッチ0.1mmで行うと、積み重ねる回数はの100回になります。当然、他の設定を変えなければ時間もおよそ倍かかるということです。


時間がかかる一方、積み重ねが細かくなるので曲面の表現などはより緻密になります。特に丸い物体などを出力した時に顕著に現れますね。


汚い造形物でちょっと申し訳ありませんが写真の左が0.25mmの積層ピッチ、右が0.1mmの積層ピッチです。


ここまでをまとめると……


・積層ピッチが大きい(粗い)とプリント時間が短くなる
・積層ピッチが小さい(細かい)とプリント時間が長くなる

ということになります。


もう少しあたりまえのお話にお付き合いください。


次は3Dプリントの速さと精度を左右するもう一つのファクターを見ていきましょう。

こちらはとても単純に、3Dプリンターが動く速さです。


多くの場合、3Dプリンターのノズルを点として考えた時、1秒間にどのくらい動くか(mm/s)で表記されます。性能として最大・最小速度を明記している機種もありますね。


この要素はとても明快で、極端に遅い・早い場合を除いて速度を早くすれば精度は悪くなり、速度を遅くすれば精度は良くなります。


ここからは実際の設定を変え、YOKOITOが運営する京都のものづくり広場「fagora」の3Dプリンターでプリントしながら話を進めます。


今回使うスライサー(3Dデータを3Dプリント用の形式に変換するソフト)はUltimaker社が無料で公開しているCuraというソフトのver15.02.1です。


メーカー製のプリンターの中には、専用のソフトで3Dデータを読み込むことでしかプリントできないものもありますが、(ここまで細かく設定はできなくとも)基本的な考え方は同じなので「Cura使えないよ」という方もご安心ください。


そしてプリントするデータは、データ自体はとっても軽いのに綺麗に出すのは結構コツが要るかわいいうさぎ、Origamix Rabbitです。今回初めてプリントしたのですがリンク先の見本ほど綺麗には作れませんでした。そこはご容赦ください。


さあ、これがCuraでOrigamix Rabbitを読み込んだ画面です。設定は今回使う機体、Reprap系のGenkei社製 atom3Dプリンターのものなので、それ以外の機種の方にはあまり参考にならないかと思います。


ちょっと拡大して見てみましょう。先ほどお話した積層ピッチは0.25mm、プリント速度は30mm/sの設定にしています。赤枠で囲んだところに注目。Curaはプリント時間を大体57分と見積もっています。経験上これは大体合っています。目安ですね。


うさぎのサイズは変えず、高さおよそ86mmでプリントします。プリント素材はPLAです。ちなみに今回はサポート材なし、infillなし、外殻の厚みを1層で行っています。


さあatom3Dプリンターをスタートさせます。

――57分後(多分)――

できました!


それなりに綺麗に出来ましたがしっぽや耳のところがぐちゃっと垂れてしまいましたね。色々な要因が考えられますが今回はプリンターの動く速度を落としてみましょう。


Curaの設定を変更。左の赤枠を見て下さい。プリント速度を15mm/sに変更しました。先ほどの30mm/sの半分です。


すると右の赤枠のところ、予想時間が約1時間14分になりました。先ほどより17分長くなっています。細かい設定のところが色々と制約を加えているので単純に倍とはなりませんでしたが、確実に長くなっています。つまり、プリントがよりゆっくりになっているということ。


ほかは全て先ほどと同じ設定、機体、素材でいきます。


それではもう一度atom3Dプリンターをスタートしましょう。

――1時間14分後(多分)――

できました。


お、さっきより綺麗なんじゃないでしょうか。垂れが少ない気がしますね。

さらなる比較のため3回目のプリントを行います。


今回は速度を1回目と同じ30mm/sに戻して 、代わりに積層ピッチを0.25mmから0.15mmへ変更します。そうすると当然1回目よりプリントにかかる時間は長くなります。右上の赤枠の部分を見ると、プリント予想時間は1時間34分。これは1回目に比べて積層ピッチが細かくなった分に反比例して時間が長くなった、と言えるでしょう。


先ほど同様、他の設定、機体、素材は変更せずにプリント開始します。

――1時間34分後(多分)――

できました!


さあ、ここで完成した3つのうさぎさんを並べてみましょう。


から1回目(積層ピッチ0.25、速度30mm/s、所要時間57分)、2回目(積層ピッチ0.25、速度15mm/s、所要時間1時間14分)、3回目(積層ピッチ0.15、速度30mm/s、所要時間1時間34分)です。


あれ?


積層ピッチを細かくして一番時間をかけてプリントした3回目(左)よりも、積層ピッチそのままでプリンターの動く速度を落とした2回目(中央)の方が、しっぽのあたりとか綺麗に出ていませんか?


今度は他の角度から見てみましょう。


ややこしくてごめんなさい、さっきと並び順が逆です。今度はからそれぞれ1,2,3回目です。


おっと。


サポート材無しでの難関、アゴの下あたりも、2回目(中央)の方が3回目(右)より綺麗ですね。


そうなんです。

積層ピッチを細かくして時間をかけてプリントするよりも、プリンターの動く速度を落としてプリントしたほうが早くて綺麗にできる場合がある


ということを皆さんにお伝えするために、こんなに長々と書いてきました。


もう1枚見てみましょう。


またごめんなさい、並びが戻ってからそれぞれ1,2,3回目です。


耳のあたりも少し2回目(中央)のほうが綺麗でしょうか。背中の斜めラインは3回目(左)の方が綺麗に見えます。さすが0.15mmピッチと言ったところですね。


しかし全体を見れば今回の勝者は明らかでしょう。2回目、0.25mmの積層ピッチで15mm/sのプリント速度のうさぎさんが一番綺麗です。


今回は直線的な3Dモデルを出力したのもあって、このような結果になりました。


勿論速度を変えずに積層ピッチを細かくした方がいい場合もあります。しかし正六面体や棒状のものなど、角を持つ3Dモデルを出力する際にはプリント速度が鍵を握っている場合が多いと思います。皆さんも色々と試して、自分なりの設定を見つけてみてください。


ちなみにいいとこ取りをして積層ピッチ0.15mm、プリント速度15mm/sで出力すると今回のどのうさぎさんよりも綺麗に出力可能だと思います。※但し2時間2分かかります。


ここまで長々と読んでくださりありがとうございました。YOKOITOの髙松でした。ご意見・ご質問等はこちらのコメントか、Twitterアカウント@YOKOITO_infoまでお願いします。今後の参考にしたいのでフィードバックをいただければ幸いです。

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